ご家族からのお手紙と、初診で大切にしていること|ブログ|名古屋伏見こころクリニック

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ご家族からのお手紙と、初診で大切にしていること

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こんにちは、名古屋伏見こころクリニックの院長の宮田明美です。
初めて受診される患者さんのご家族から、「本人には内緒で、家での様子を読んでほしい」とお手紙をいただくことがあります。「本人は本当のことを話さないかもしれない」「家での荒れた状況を知ってほしい」など、お手紙の背後にあるご家族の切実な思いや出口の見えない不安は、一文字一文字から痛いほど伝わってきます。
今日は、そんな「ご家族からのお手紙」に、私たちがどのように向き合っているかをお話ししたいと思います。

 

まずは「ご本人の安心」を一番に

 

せっかくお手紙を書いたのに、診察後にご本人から「先生は話を聞いてくれたよ」とだけ聞くと、ご家族としては「ちゃんと手紙の内容を汲み取ってくれたのかしら?」と、不安に感じられるかもしれません。もちろん、お手紙の内容は可能な限り把握した上で診察に臨んでいます。ただ、ここで大切にしたいのは、初めて来院されたご本人が「ここは誰にも邪魔されず、自分の本音を話せる場所だ」と感じられる安心感です。ご本人が「なぜ先生がそんなことまで知っているんだ?」と不自然に感じたり、誰かに監視されているような感覚を抱いたりすることなく、まずは目の前の医師を信頼してみようと思えること。この信頼の土台があってこそ、お手紙でいただいた貴重な情報も、後の診察で生きてくることになります。

 

治療を進めるために大切なこと

 

ここで一つ、皆さんに大切にしていただきたい視点があります。 診察の場は、誰が正しいか、誰に非があるかを決める場所ではありません。もし診察室が、どちらの言い分が正しいかをジャッジする場所になってしまったら、ご本人もご家族もかえって傷ついてしまいます。たとえご家族が「これが問題だ」と感じている事実があったとしても、まずは「ご本人の意思が大切」と私たちは考えます。そのため、ご本人に十分な治療の意欲がない場合は、残念ながら治療をお引き受けできないことがあることをどうかご理解ください。一見厳しい方針に聞こえるかもしれませんが、私たちは、こころの医療はご本人と医師が手を取り合って進むものだと考えているからです。「内緒のお手紙」を回復の力に変えるためにも、まずはご本人が自らの足で診察室に入り、自らの言葉で語り始める。その第一歩を、私たちは全力で支えたいと考えています。ご本人との信頼関係を第一に守ることは、一見遠回りに見えるかもしれません。しかし、それが結果として、ご家庭に平穏が戻るための「一番の近道」になると信じています。

 

(あとがき)

今回のように、ご家族としてどう支えていけばいいか、あるいは受診までどう導けばいいかとお悩みの方も多いかと思います。当院の方針についてご不安な点がございましたら、お電話にてお問い合わせください。このブログが、ご本人や同じような思いを抱えるご家族の救いになり、治療がより円滑に進む一助となることを願っております。

 

監修医師:宮田 明美(みやた あけみ)

名古屋伏見こころクリニック院長。医学博士。お茶の水女子大学心理学専攻卒業、名古屋市立大学医学部卒業。心理学と医学の両面からこころの問題に向き合い、精神科専門医・精神保健指定医・産業医として活動しています。

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