強迫症の認知行動療法|ブログ|名古屋伏見こころクリニック
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強迫症/強迫性障害(以下、強迫症とします)とは、不安や心配が頭から離れず、それを和らげるために特定の行動を繰り返してしまう病気です。ここ数年で有名人や著名人がこの病気を公表し、話題になることも増えました。
今回は強迫症の治療についてご説明します。まず症状について知りたい方はこちらをご覧ください。
●治療
強迫症の治療には、薬物療法と併せて、認知行動療法の1つである曝露/反応妨害法が有効であるとされています。
曝露/反応妨害法とは、とても簡単に言うと、「嫌なことをあえてする治療法」です。不安を引き起こす状況にあえて向き合い、それに対する強迫行為(手洗い、確認など不安を打ち消すためにする行動)をしないよう練習をしていきます。
例えば「ウイルスに感染するかもしれないという不安から、頻回に手洗いを繰り返す」といった症状がみられる場合、「汚いと思うものに自分からあえて触って、手洗いをせずに過ごす」ことに取り組みます。
「きれいなもの」「汚いもの」の区別があれば、それを少しずつ変えていく練習をします。例えば、「汚いもの」に触った後に自分の身体に汚れを広げる、といったイメージです。
この治療方法は勇気が必要ですが、治療者と一緒に何から・どうやって取り組むかをしっかり話し合いながら、一歩ずつその方に合わせて進めます。
トレーニングを繰り返すことで、不安や心配、不快感との付き合い方を身につけていきます。
治療にあたって、まず強迫症状がいつ・どこで・どのように生じているのか、どう対処してきたのか、どうなりたいのかなどお話をうかがいながら個別に治療方針を検討します。同じ強迫行為がみられる方でも、何が不安なのか、生活にどう支障をきたしているかその方によって大きく異なるためです。同時に、どのような流れで症状が維持されているのかを理解することも、大切な治療のプロセスになるからです。
●治療上のポイント
ホームワーク(宿題)の実施
来院時だけでなく日常生活のなかで何度も繰り返しトレーニングを行うことが非常に重要です。トレーニングを自宅でも繰り返し行うことでだんだんと不安・不快との向き合い方が身についてきます。少なからず手間や労力はかかりますが、来院時のみだと時間が限られているため、ホームワークの実施は改善のため必要不可欠な要素といってもよいでしょう。
ホームワークを何からどのように取り組むかは、治療者と一緒に決めていきます。
曝露反応妨害法≠「とにかく我慢する」
曝露反応妨害法について、「我慢すること」と理解されることもありますが、これは適切ではありません。
「我慢する」を目標にした場合、頭のなかで確認行為を行っていることが多いからです(例:頭のなかで何度も大丈夫、大丈夫…と自分に唱える、不安を感じないように他のものに注意を向ける)。その結果、十分な曝露にならず、なかなか改善がみられない場合があります。
曝露反応妨害法は、「あえて自分から不安・不快に臨み、その不安・不快を解消せずにそのまま味わうトレーニング」です。自分から避けていたことに立ち向かっていくこと、嫌な気持ち・感覚をそのまま感じることが大切です。
薬物療法の必要性
強迫症に対する主要な治療は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を主とした薬物療法と認知行動療法の併用とされています。認知行動療法単独の場合、十分な効果が得られない場合があります。
今まさに不安や恐怖にさいなまれている人にとって、いきなり認知行動療法を受けるのはかなりハードルが高いことかもしれません。そのような場合には、まず薬によって不安や恐怖を和らげてから少しずつ強迫行為をおさえる・不安にのぞむ治療を行っていきます。
離脱症状や再発の観点から、薬の量を減らしたり、中止したりする際にも自己判断ではなく医師とよく相談することが必要です。認知行動療法で強迫症のプロセスを学び、強迫観念・行為への対処方法を身につけておくことは再発予防としても役立ちます。
当院では、強迫性障害に対する治療も行っています(心理カウンセリングは保険適用外)。
1人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【参考図書】
読む常備薬 図解いちばんわかりやすい強迫性障害:強すぎる「不安」と「無意味な行動」の断ち切り方 原井宏明(監修) 河出書房新社