その「早めの仮眠」が不眠の原因かも?|ブログ|名古屋伏見こころクリニック
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「今日は疲れたから、夕食後にちょっと横になろう」「電車でウトウトしてしまった」――このような経験は、誰にでもあるでしょう。しかし、実はその「ちょっとした仮眠」や「早すぎる就床」が、あなたの夜の睡眠の質を大きく低下させている可能性があるのです。今回は、睡眠の治療で重要視されている「睡眠禁止ゾーン」について解説し、質の高い睡眠を得るための具体的な対策をお伝えします。
人間の体には、「体温が高いと活動的になり、体温が低いと眠くなる」という、自然なリズムがあります。質の高い睡眠をとるためには、このリズムに乗って入眠直後に深部体温(体の内部の温度)が急速に下がることが必須条件となります。ところが、一日のうちで、深部体温が最も高く、脳が覚醒している状態にある時間帯が存在します。それが、就寝の約2〜4時間前です。この時間帯は、脳波上も最も眠りにくい時間帯であり、「睡眠禁止ゾーン」と呼ばれています。例えば、午前0時に寝る方であれば、午後8時〜10時の間がこれに当たります。
この時間帯に寝てはいけない3つの理由
1.睡眠の質が落ちる
体温が高く、交感神経が優位なため、質の良い深い睡眠がとれません。たとえ眠りに入れたとしても、すぐに目覚めてしまう可能性が高くなります。
2.寝つきが悪くなる
脳が覚醒しているため、なかなか寝つけない、睡眠薬の効果が出にくい、といった状態になりやすいです。
3.慢性不眠症の原因に
睡眠禁止ゾーンに無理に寝ようとすることで、寝室や寝床に対する恐怖感(寝室恐怖)が生まれ、慢性的な不眠症へとつながる最大の原因となります。
💡 ポイント: この時間帯に強い眠気を感じるのは、「自然な眠気」ではなく、「睡眠不足や日中の疲労感」が原因です。疲労感と眠気は異なります。
この睡眠禁止ゾーンは、私たちの体内時計が覚醒力を高める、いわば夜のゴールデンタイムでもあります。この時間を上手に活用し、夜の快眠へとつなげましょう。
1.夕方は体を動かし、活動レベルを上げる
睡眠禁止ゾーンの始まり(午後6時〜8時頃)にかけて、軽く体を動かし、深部体温を上げておくことが有効です。ウォーキングや軽い筋トレなどの運動は、血行を促進します。体温を上げることで、その後、眠るべき時間に向けて体温がスムーズに低下するリズムを作ることができます。
2.寝る時間まで、「我慢」して活動する
生理的な眠気が十分に高まるまでは、無理に早寝をしないことが重要です。眠気に襲われたら、少し頭を使う作業(ニュースのチェック、読書など)や、軽いストレッチなどで眠気を吹き飛ばしましょう。不眠の認知行動療法(CBT-I)でも、睡眠禁止ゾーンでの早寝を避け、生理的な眠気が高まるまで就床を我慢する「遅寝」が推奨されています。
3.自分の体内時計を知る(夜型の人は注意!)
上記で紹介した午後8時〜10時という時間は、一般的な「0時頃に寝る人」の例です。しかし、体内時計には大きな個人差があります。夜型の人は、睡眠禁止ゾーンが遅い時間にずれている場合があります。このタイプの人が早寝を強いられても、なかなか眠れません。夜型による不眠の改善には、週末の寝坊を止め、毎朝起床後すぐに自然光を浴びることで、体内時計を少しずつ前倒ししていくことが有効です。
質の良い睡眠は、心と体の健康の基盤です。ご自身の「寝てはいけない時間帯」を理解し、この時間を活動や体温上昇に使うことで、入眠をサポートする正しいリズムを整えましょう。
監修医師:宮田 明美(みやた あけみ)
名古屋伏見こころクリニック院長。医学博士。お茶の水女子大学心理学専攻卒業、名古屋市立大学医学部卒業。心理学と医学の両面からこころの問題に向き合い、精神科専門医・精神保健指定医・産業医として活動しています。