自分に思いやりを向ける技術-セルフコンパッション|ブログ|名古屋伏見こころクリニック
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「もっと頑張らなきゃ」
「こんな自分じゃダメだ!」
「何で自分はこんなにできないんだろう……」
日常の中でついついこのように考えてしまうことはありませんか? 本来であれば自分を叱咤激励するための言葉ですが、実際には自分を追い詰めてしまうことで疲弊し、動けなくなってしまうことも少なくありません。
ストレスの多い現代社会において、近年注目されているのが「セルフコンパッション」という考え方です。
セルフコンパッションとは、一言で表現するならば「つらいときの自分に対して、思いやりを向ける力」です。困難な状況や自分の失敗に直面した際に、自分を批判するのではなく「思いやり」「理解」「優しさ」をもって自分に接することを指します。
「自分に優しくすること=甘え」と思われる方もいるかもしれません。しかし研究では、セルフコンパッションが高い人はストレス耐性や人生への満足度などが高く、不安や抑うつ気分などが低いことが分かっています。失敗を恐れずに挑戦し、成長していくことができます。むしろ自分に厳しい人ほど、失敗への恐怖が強く、新しい事になかなか挑戦できず踏み留まってしまうことも多いようです。
セルフコンパッションの考え方を提唱したKristin Neff博士は、セルフコンパッションは3つのポジティブ要素と3つのネガティブ要素から構成されると説明しました。
① 自分への優しさ(⇔ ④ 自己批判)
多くの人は、他人の失敗には優しくできても自分の失敗には厳しいものです。「自分への優しさ」とは、自分が苦しんでいる時にこそ「よく頑張っている」「辛かったね」「大丈夫だよ」とあたたかい言葉で接することを指します。
② 共通の人間性(⇔ ⑤ 孤独感)
「自分だけが駄目なんだ」「自分だけが苦しい思いをしている」と一人で問題を抱え込み、孤独感を抱くことも多いでしょう。しかし、人間はみんな失敗し、落ち込みを経験する不完全な動物です。「人間である以上、失敗は当然のこと」と考え、他者との共感や繋がりを思い出すことが大切です。
③ マインドフルネス(⇔ ⑥ 過剰な同一化)
辛い時に「我慢しよう」「早く前向きにならなきゃ」「忘れなきゃ」と思えば思うほど、その辛さに囚われてしまいがちです。マインドフルネスでは、「今、ここ」で感じていることを評価せず、ありのままに見ることを重要視します。「今、自分は辛いと感じているんだなぁ」と気づき、肯定も否定もせずそのままにしておくことで、辛さに巻き込まれないようにします。
セルフコンパッションはよく筋トレに例えられます。セルフコンパッションを行えば行うほど、思いやりや愛情に関わる脳の部位が発達し、セルフコンパッションが高まります。
セルフコンパッション自体も特別なスキルではありません。日常の中でしていることや普段考えていることをほんの少し変えるだけで、セルフコンパッションへと繋がります。
① 自分への言葉かけを変えてみる
例えば仕事や学校でミスをしたとします。人間、生きていればミスや失敗は付き物ですが、つい「あぁまたミスをしてしまった……」「自分はなんて駄目なんだ!」というきつい言葉を自分にかけてしまうことも多いでしょう。
この時の言葉かけを少し意識して変えてみます。「人間なんだからミスをすることもあるよね」「大丈夫。そういう時もあるよ」というような形です。ここでのコツは、「もしも自分の大切な人(家族、親友、恩人など)が同じような状況だったら、何と言葉をかけよう?」と考えてみることです。自分に優しくするのは難しくても、他者に優しくすることは比較的やりやすいかと思います。この時に思い浮かんだ言葉を、次は自分にも向けてみるのです。
② 今の自分の状態に気がつく
苦しい時や辛い時ほど「もっと頑張らなきゃいけない」「このままでは駄目だ」と自分を鼓舞し、前に前にと進もうとします。しかし自分の気持ちとは裏腹に身体がついていかず、思ったように上手くできずに、余計焦ってしまうこともあるのではないでしょうか。
「もっと頑張らなきゃ」と思った時こそ一度立ち止まり、今の自分の状態に意識を向けることが大切です。「今の自分の体調はどうだろう?」「今の自分は何を感じているんだろう?」「今の自分にとって本当に必要なことは何だろう?」と自分に向き合うことで、今この瞬間の自分に一番必要なことが見えてくるかもしれません。
③ セルフコンパッション・ブレイク
「セルフコンパッション・ブレイク」は、自分に対する優しさを深めるセルフケアの方法の1つです。日常生活の中で強いストレスを感じたり、辛い感情が湧き上がってきていることに気づいたとき、一旦立ち止まって行える簡単なエクササイズです。
強いストレスや感情に気がついたら:
1. 「あ、今ストレスを感じているんだな」「これは辛いなぁ」「あーあ……」のように、今ここで感じている苦痛や苦悩を否定せず、ありのままに受け止めます。
2. 「こういうことって他の人もあるんだろうなぁ」「自分だけじゃない」「苦しみは人生の一部だ」のように、共通の人間性を感じることのできるフレーズを思い浮かべます。
3. 自分で自分を優しく抱きしめたり、自分の身体の一部をそっと撫でたりし、手のぬくもりやそこから伝わる優しさを感じます。自分に安心を感じることを許してください。
4. 最後に、自分へ優しさや思いやりを向けます。困難な状況にいる時に自分が聴く必要のある言葉を思い浮かべます。よく出される例としては「私が自分自身にやさしくありますように」「私がそのままの自分を受け入れていますように」「私が幸せでありますように」などがありますが、自分にとってしっくりとくるフレーズを見つけることが大切です。
自分が本当に調子を崩している時に必要なのは、叱咤激励ではなく優しさや思いやり、そしてそれらを感じることを自分に許すことです。
もしも今日、失敗してしまったりうまくいかなかったりしたことがあったら、ほんの少しだけ自分に思いやりの言葉をかけてみてください。